小野小町

面影知らぬ人の心を

この人について、確かな記録は古今和歌集のみと言えるのではないかと思います。(生没年不明。系図も推測で、強い根拠はないらしい。もちろん、生前の肖像画も存在しない)
むしろ、何か小野小町自身について隠されているようにも思えます。(藤原氏の繁栄していく中で、小野氏は没落していったようです。某作家のように悲劇的に死んだとも思わないけれども、どこか、後世では本名を言うのははばかられるところがあったのかもしれない。「あの小野の小娘の話はしないでよ!」なんて言いそうな藤原家の(かつての)姫もいたのかもしれません。)
とはいえ、古今和歌集にある和歌のみで十分だとも言えるのではないかとも思うのです。 それ程、小野小町の和歌は、読むものに文章で表現しがたい何物かを与えます。

それは、もしかすると限りない自由なのかもしれない。

私は、高校時代は古文が苦手で、古文文法についてはほとんど記憶がありません。その私が、和歌の解釈について色々言うのは、傲慢の極みとも思います。とはいえ、平安の歌人たちは古文文法など知らなかった筈で、専門家の先生方の注釈を頼りとしながら、自分なりの解釈をしてみたいと思います。

なお、なにせ昔はみんな手書きで写していた訳で、漢字か、かな書きかなど、字句に異同があります。(「うつりにけりな」と「移りにけりな」など。)そのため、このページでは、参考文献1に従っています。


私流解釈


歌の行をクリックすると、それぞれの歌の解説ページに移ります。
ただ、申し訳ありませんが、まだ全部は完成していません。

まず、歌、巻名、歌の通し番号を記入し、
末尾に
「訳」が付いているものは、私流の現代語訳、
「語」が付いているものは、語句の説明、
「解」が付いているものは、私の勝手な解説
を付けてあります。

現代語訳、語句の説明がないものについては、近い内に追加する予定です。


春歌

花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに (訳語解)


恋歌

思ひつつ寝ればや人の見えつらむゆめとしりせばさめざらましを (訳語解)

うたたねに恋しき人を見てしより夢てふものはたのみそめてき (訳語解)

いとせめて恋しき時はむば玉のよるの衣を返してぞきる (訳語解)

おろかなる涙ぞ袖に玉はなす我はせきあへずたぎつ瀬なれば (解)

秋の夜も名のみなりけりあふといへば事ぞともなくあけぬるものを (解)

うつつにはさもこそあらめ夢にさへ人目をよくと見るがわびしさ (訳語)

限りなき思ひのままに夜もこむ夢路をさへに人はとがめじ (訳語解)

夢路にはあしもやすめず通へどもうつつに一目見しごとはあらず (語解)


雑歌

今はとてわが身時雨にふりぬれば言の葉さへにうつろひにけり (解)

色見えでうつろふものは世の中の人の心の花にぞありける (訳語解)

あきかぜにあふたのみこそかなしけれわが身むなしくなりぬと思へば (解)

わびぬれば身をうき草のねをたえてさそふ水あらばいなむとぞ思ふ (訳語解)

あわれてふことこそうたて世の中を思ひはなれぬほだしなりけれ (解)


雑体

人にあはむつきのなきには思ひおきてむねはしり火に心焼けをリ (解)


墨滅歌

おきのゐて身をやくよりもかなしきはみやこしまべのわかれなりけり (解)



参考文献(将来の追加のために、番号、飛び飛びになってます)

各本の書名をクリックすると、amazonの商品ページに移動するものがあります。 小野小町 伝説 小野吉子 美人 深草少将 僧正遍昭 九相図 百夜通い 随心院 良岑宗貞
新本の他、古本の販売もありますので、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
「現在おとりあつかいできません」となっていても、古本だと売っている場合もあります。
小野小町 小町 百人一首 アキタコマチ 吉子の恋 古今和歌集 百人一首 平安時代 平安美人 吉子の恋 百人一首 

1.「古今和歌集」角川ソフィア文庫 窪田章一郎(校注)
昭和48年1月30日初版発行
平成18年2月20日35版発行

注釈、作品の解釈なども充実していて、まず手に入れたい一冊です。
下の角川文庫版の本も、同内容です。ただ、amazonでは現在、角川ソフィア文庫版のみの扱いのようです。

「古今和歌集」角川文庫 窪田章一郎(校注)
昭和48年1月30日初版発行
昭和52年2月20日 7版発行


2.「古今和歌集」岩波文庫 佐伯梅友(校注)
1981年1月16日第1刷発行
2010年8月6日 第49刷発行

注釈は充実しているのですが、歌全体の解釈については書いてないので、素人には少し歯ごたえがありすぎます。

3.「古今和歌集 全訳注」講談社学術文庫 久曽神昇(きゅうそじん ひたく)(訳注) 
(一)仮名序、春歌上、春歌下、夏歌 昭和54年9月10日  第1刷発行
(三)恋歌一〜五、哀傷歌 昭和57年12月10日 第1刷発行、昭和62年3月30日 第3刷発行
(四)雑歌上下、雑体、大歌所御歌、真名序 1983年1月10日 第1刷発行、2000年7月19日 第17刷発行

各歌に、[歌意]、[語釈]、[観賞]等の説明があり、大変読みやすく充実した本です。ただ、この本では、「花の色は〜」の
解釈を自己の容色を例えたとした解釈を採っています。

4.古典文学解釈講座第17巻 「古今和歌集 新古今和歌集」 三友社出版 菅野雅雄(監修 )
1994年4月1日 初版発行

各社の解釈書をまとめた本で、種々の解説、注釈をまとめて見ることができます。
小野小町の歌は、113,552,553,554,657,797,938を所収。

5.新 日本古典文学大系5 「古今和歌集」 岩波書店 小島憲之、新井栄蔵(校注)
平成10年10月10日 発行

6.笠間文庫―原文&現代語訳シリーズ「古今和歌集 」 笠間書院 片桐洋一(訳、注)
2005年9月30日 初版第1刷

歌、現代語訳、語句の解説が一箇所にまとまっていて、読みやすい本です。

7.新編 日本古典文学全集11 「古今和歌集」 小学館 小沢 正夫、松田 成穂 (校注、訳)
1994年11月20日 第1版第1刷 発行
2004年5月20日  第1版第4刷 発行

9.和歌文学大系18 「小町集・業平集・遍昭集・素性集・伊勢集・猿丸集」 明治書院
室城秀之、 高野晴代、鈴木 宏子 (共著)、久保田 淳 (監修)

他の人の作品も入ってしまっているという評判(?)の小町集ですが、一度は見てみたいですね。

10.「百人一首」 角川文庫 島津忠夫(訳注) 
昭和44年12月10日 初版発行
昭和47年12月09日 13版発行
昭和52年05月20日 改版9版発行

「花の色は〜」の解釈を読みたくて入手しました。撰者とされる藤原定家の解釈に沿って、やはり「花の色は〜」の解釈を自己の容色を例えたとした解釈を採っています。

11.「歴史発見 6」 角川書店 NHK歴史発見取材班
平成5年5月30日 初版発行

NHKのテレビ番組「歴史発見」に基づいた本です。ミステリの女王 山村美紗さんの説を井沢元彦さん、里中満智子さんが聞いています。
確実な手がかりを限定し、そこから推論を組み立てていく手法は、さすが、という感じです。

12.「四季の歌 恋の歌−古今集を讀む」 筑摩書房 大岡信(著)(経歴記載なし)
昭和54年5月30日 初版第1刷発行

埼玉福祉会が大活字本としても出版しています。(経歴記載あり(当時))

20.「国語Tシリーズ6 万葉集・古今和歌集・新古今和歌集」 中道館 森藤憲定(著)
1983年5月25日 初版発行
2000年 重版発行
高校生用の参考書なんですが、丁寧な説明が加えられていて、とても読みやすいです。


50.「全訳読解 古語辞典 小型版」 三省堂 (編者)鈴木一雄(代表)、伊藤 博、外山 映次、小池 清治
1996年1月21日 発行
2000年1月20日 第14刷発行

「花の色は〜」を春の歌としています。

51.「新明解 古語辞典 第三版」三省堂 (編者)金田一春彦、三省堂編修所
1995年1月20日 第三版発行
1996年2月10日 第5刷発行

「花の色は〜」を小町自身の容色とした解釈に近い解説をしています。


90.哺乳類型爬虫類―ヒトの知られざる祖先 (朝日選書) 朝日新聞社 金子隆一(著)
1998/09

我々哺乳類の遠い先祖は、爬虫類の一種でした。恐竜が栄える前、彼等は大繁栄していたのですが、ペルム紀という時代が終わるとともに、衰退してしまいます。
その後、恐竜が繁栄していた時代、隠れるように生きながら、少しずつ、現代の哺乳類の長所を身につけます。(胎内で子を途中まで育て酸素と栄養を豊富に与える、横隔膜による腹式呼吸、出産後の授乳、発達した脳など)
その長い歴史を、描いた数少ない本です。

91.恐竜vsほ乳類 1億5千万年の戦い (NHKスペシャル) ダイヤモンド社
2006/7/13

NHKで放送した番組の関連本なのですが、書籍ならではの丁寧な説明もあり、充実した内容です。
恐竜と哺乳類というライバル関係にある二種の生物の歴史を扱っています。
自分たち自身について、そして我々の隣人である鳥類(恐竜の一種であるとする学者もいます)について、色々なことを教えてくれる本です。


100.宗像教授伝奇考 第六集 星野之宣(著)

SF作品でも著名な星野之宣さんが歴史に材を採った劇画作品です。
私が小野小町に興味を持ったのは、この中にある「夢と知りせば」を読んでからでした。
実は高校の古典の授業で習った和歌の内、「花の色は〜」の歌だけはなぜか暗記していたのですが、小野小町については伝説程度の事しか知りませんでした。(あ、なぜかお米はアキタコマチをよく食べてます)
その生涯が全く不明であることを教えてくれたのは、この作品でした。
小野小町に絡めて、宗像教授の青春の面影が描かれる、味わい深い作品です。


101.小説 小野小町―吉子の恋 三枝和子 著
福武文庫
単行本

小野小町 更衣説をとった小説です。
謎に満ちた小町の人生を想像するためのたたき台として、一度は読んでおきたい小説に思えます。さまざまな歌や説話を小説に織り込んで、三枝和子さんが見事な小説に仕上げています。






























中川えり子 早乙女ミキ