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いとせめて恋しき時はむば玉のよるの衣を返してぞきる
(恋歌二 554)

(私訳)
とても恋しくてたまらない時は
寝巻きを裏返しに着て寝るおまじないをして
夢の中であの人に会えるのを祈るの

(語句説明)
いとせめて
(ひどく身に迫るほど)

恋しき時は
(恋しい時は)

むば玉の
(「夜」の枕詞。直接の意味はない。)

よるの衣を
(夜寝るとき着る衣。寝巻き)

返してぞきる
(裏返しに着て寝る)


万葉集の昔には、寝巻きの袖を折り返して眠ると、恋しい人に会え
たそうです。それが、平安時代になって、寝巻き全体を裏返しにし
おまじないに変わったようです。
「むば玉」というのは夜の枕詞ですが、夜のイメージを強めるのに
いるように思えます。
「むば玉」は、雑草の実で、球形で黒くつやつやと光っています。